![]() 「アイノトビラ」 1998/09/23 リリース \ 3,059 (税込) BMGファンハウス |
リリースエピソード
2枚目となるアルバムは、舞台やドラマなどのスケジュールの兼ね合いがうまくいかず、企画段階から幾度となく中断され、1年以上もかけて完成させたという、松さんにとってとても思い入れのある作品となりました。デビュー当時は、漠然とした楽しみだったのが、だんだん歌える喜びと素晴らしさになっていったとのこと。その気持ちの変化は、作品の中にも当然表れています。前作「空の鏡」は、音楽スタッフにおまかせといった感じでしたが、今回は松さんによる作詞も8曲に増えて、こだわりがよく出ています。そして最後の「あなたへ」では、初めて作詞作曲にチャレンジ!より松さんらしい作品となりました。
作詞スタイルにも、微妙な変化があります。5thシングル「サクラ・フワリ」あたりからでしょうか。今まで誰かを呼ぶ時は「君」と言っていたのが、「あなた」と呼ぶようになりました。きっかけは、20歳の誕生日のパーティーで、「楽しい時間が終わった時の静けさと空しさ、余韻の寂しさ」を感じとった時からだそうです。だから意識したものはなく、自然に変わっていった世界観だったわけですね。
序曲でアルバムタイトルでもある「アイノトビラ」は、元SR smoothyのShin(現Sin)こと橋本しんさんが作曲した「Inside Of You」の歌詞に出てくる言葉を、そのままとったもの。正式に決定したのは、プレス前ギリギリだったとか・・・(汗)。そして、全てのはじまりを示す「BEGINNINGS」からスタート。スタッフの「お色気系」という要望(笑)が入った「a secret」。途中にある不思議な曲「恋するギョーザ」は、篠原ともえさんがコーラスを担当。ギョーザにした理由は、前作の「からいかれ」を制作していた時点で、「次は餃子」と決定していたかららしい(笑)。「君じゃなくてもよかった」はショッキングなタイトルですが、前田さんによると、相手が君ではなくてよかった恋愛という意味なんだそうです。ラストの「あなたへ」は、外国へ離れてしまった、幼い頃からの友人へ向けたもの。ピアノのぬくもりが伝わる曲で、優しく締めくくられます。松さんがその場で"適当に"弾いたものが、そのまま採用されたそうです。これらほとんどの曲が1発録りというんだから、恐れ入ります(汗)。
今作品は、BMGジャパンでの最後のアルバムとなりました。このアルバムの後、松さんはユニバーサルミュージック(ポリドール)へ移籍することになります。
ミュージックレビュー
心地よい眠りへいざなうかのような癒されるイントロは、まるでヒーリングミュージックのよう・・・。夢の世界で誰かが遠くから呼んでいる。これから始まる物語の幕開けとなるオープニング。少し懐かしい感覚や風景を思い出させられるメロディーに導かれるまま、ストリングスだけを残してフェードアウト・・・。
BEGINNINGS
作詞:永山耕三 作曲・Shin 編曲:武部聡志
Music
序曲から繋がっているストリングスが、リスナーをこの曲の世界へ一気に引き込みます。新しい何かがスタートした雰囲気を、見事に表現した秀作。伸びやかな松さんの声の中には、確実に前へ進もうとする気持ちが伝わってきます。武部さんの穏やかなアレンジも心地いい。明るさの中に、幻想的な雰囲気が流れているサビメロがとても印象的で、心を掴まれますよ。
Word
無情な時の流れの中、想いを伝えようとしている詩。サビの部分に、気持ちが色濃く映されています。「なぜ大人になっていくの」や「失くした優しさ」といったフレーズが、空しさを演出しているのもポイントです。はじまりの想いを伝える部分から、新たしい日々がスタートしたラストの表現まで、街が目覚める前の「青い夜明け」という、幻想的なシチュエーションで演出されているのは見事!
Music
ベースを存分に響かせた、神秘的で柔らかいストリングスの音色が特徴的な曲。松さんがささやくように、優しい歌い方をしているのがポイント。エコーを響かせた歌声には、フワっとした感覚が生まれていて、艶やかな雰囲気があります。ラストの切なさが感じられるハミングは、とても耳に残りやすいフレーズです。強いアクセントを踏みながら、徐々にフェードアウト。
Word
自分の胸の中だけにある秘密(想い)を、そっと神様に託す、乙女チックな歌詞。一緒にいるときだけは、夢を見ることができた・・・過去形の表現が切なく美しい。今にも散ってしまいそうな雰囲気を漂わせています。神様に導かれた運命を信じるという部分に、とても繊細な気持ちが伝わってきますね。一つ一つの言葉に重みがあり、大切さを感じます。全体的に、少し大人びた印象もありです。
Kisses
作詞:岩里祐穂 作曲:上田智華 編曲:武部聡志
7thシングルカップリング曲。詳細レビューは「Kisses」をご覧ください。
ごめんね。(album mix)
作詞:前田たかひろ 作曲・編曲:武部聡志
6thシングル曲。アルバム用として、新たにmixされたもの。バイオリンのアクが少し強調された形で編集され、間奏のエレキがアコギに変更されています。詳細レビューは「ごめんね。」をご覧ください。
Stay with me
作詞:松たか子 作曲・編曲:武部聡志
7thシングル曲。詳細レビューは「Stay with me」をご覧ください。
On the way home
作詞:松たか子 作曲・編曲:武部聡志
6thシングルカップリング曲。詳細レビューは「On the way home」をご覧ください。
20 Candles
作詞:松たか子・真宮ほのか 作曲・編曲:武部聡志
4thシングルカップリング曲。詳細レビューは「20 Candles」をご覧ください。
5thシングルカップリング曲。詳細レビューは「あくび」をご覧ください。
Music
アコギ2本とベースをバックに、コミカルな雰囲気が流れる個性的な曲。短めの歌で、全体的にほのぼのした曲風になっています。サビメロの急降下ラインなんて、聴いていると力が抜け落ちそうですよ(笑)。途中で松さんを追いかける篠原さんのコーラスが、かなりおどけていて面白い。二人の息は、ピッタリですね。
Word
食べ物タイトル第2弾。好きな人へ、自分の気持ちを訴えている詩。何といっても、途中で自己表現をギョーザに置き換えているのが面白いです。曲が和やかなだけに、「いいのゆらゆら」のフレーズがよくハマります(笑)。ちなみに「月の舟」という言葉は、人によってどうとでも解釈できそうです。とても正直な言葉が並んでいて、聴いてるほうも、幸せを祈りたくなってしまう、そんな歌詞。
君じゃなくてもよかった
作詞:前田たかひろ 作曲・編曲:武部聡志
Music
あまり聴き慣れない、特殊なコード進行が目立つ異色曲。メジャーとマイナーが入り乱れて構成されているためか、メロとサビの印象がずいぶん異なります。また、上下移動の波が激しいのも特徴的。とても切なげに歌っている松さんにも、強く印象付けられます。ストレートには聞き流せない、味のある歌ですよ。地味だけど、サビの伸ばし方とかに、何か強く訴えているのが伝わってきます。
Word
恋かどうか分からない恋を、真正直に綴っています。「どうでもいい」気がするほど、とてもクールで冷めているのが印象的。「ぜんぜん胸が痛まなくて悲しいような 恋だった」が、どうしようもない気持ちの喪失感を演出していて、ラストの「そんな恋を繰り返して錆びついていく・・・勇気が」の儚さに繋がっていく。本当は、心の底から幸せになれるような恋を、求めているのかもしれませんね。
4thシングル曲。詳細レビューは「真冬のメモリーズ」をご覧ください。
Just a flow
作詞:飛松里美・永山耕三 作曲:Shin 編曲:武部聡志
Music
イントロからソフトなドラム音が心地いい。リズミカルに刻まれるビートが印象的な歌です。自然に流れていくような、前半のピアノを中心としたシンプルな雰囲気から、大胆なストリングスやギターが加わり、曲の世界が一気に広がっていく後半の美しさは圧巻。表現の幅を広げている金子飛鳥さんのバイオリンの音色が、クラシカルな雰囲気にとてもよくマッチしていて、綺麗ですよ。
Word
時間は、どんなに悲しくても止まってくれない無情なもの。泣けてくるほど切ない詩。「タイムマシーン」という言葉には、楽しかった過去に戻りたい気持ちが如実に描写されています。「この星にはタイムマシーンがないから 悲しい記憶 消せない今は ただ流れていくだけ」が、まさにそう・・・。この先、また会えるかどうか分からないけれど、前向きに生き、信じている。誰もが、こういう気持ちを抱いて過ごしているのかもと感じさせられてしまいますね。
サクラ・フワリ(live live)
作詞:松たか子 作曲・編曲:武部聡志
5thシングル曲。アコギー2本にベースとボーカルを交えたアコースティックバージョンです。Bメロをカットし、キーはマイナーにチェンジされています。詳細レビューは「サクラ・フワリ」をご覧ください。
Music
序曲の帰路にして作品のエンディング。松さんのピアノ弾き語りです。凝ったつくりは一切なく、いたってシンプルな曲構成。優しさに包み込まれるような、松さんの曇りのない透明な歌声が堪能できる、癒しの一曲。心穏やかに、しんみりとしたラストで締めくくられます。
Word
大切な友人との再会を信じる歌。お互いそれぞれの人生を進んでいったけど、いつかまた会えたらと願う気持ちが、心から伝わってきます。自分と友人を「僕たち」と表現していますが、これは男性視点ではなく、総合的な意味合いでしょう。「街の明かり」を見ながら思うというシチュエーション、いかにも松さんらしいですね。
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