![]() 「home grown」 2003/02/19 リリース [初回盤] \ 3,059 (税込) [通常盤] \ 3,059 (税込) ユニバーサルJ |
リリースエピソード
オリジナルアルバムとしては、実に1年8ヶ月ぶりのリリースとなった5枚目の作品。とはいっても、その間に1stコンサートツアーやシングルコレクションの発売といった音楽活動をしていたせいか、不思議と長く感じることがありませんでした。ツアー終了後から制作に入った今作品。初の全国ツアーを経験したことで得られたことや、その時生まれた感情を、そのまま曲の中に詰め込んだ内容となっています。また、次のコンサートで生演奏することを想像しながら曲作りをしているということもあり、これまでのアルバムとは違う、新しい松たか子の音楽世界を印象付けたものになりました。今までアルバムに加えていたシングルのカップリング曲をカットし、オリジナル要素を増したことも見逃せません。
今回は、ツアーでコンサートマスターを務めた佐橋佳幸さんが、全曲にわたってプロデュースされています。一人で全曲というのは、松さんの作品では日向大介さん以来のこと。ギタリストとのタッグということで、作曲方法もコードを基にしたものが多く、今までとは多少雰囲気が異なっています。松さんにとっても刺激ある制作となったとのことです。レコーディングメンバーも柴田敏文さん、大滝裕子さんなど、コンサート時とそれほど変わらないメンバーで構成されています。
温もりが伝わってくる「home grown」というタイトル。訳すと「自家栽培」です。自分から出るものしか作れないもの、また、やりたいことへの想いの強さをいう意味を含んでいます。1つ1つの曲が、松さんの感情そのものということですね。作品の風味を効かせた「冬のトレモロ」、作品全体に華やかなアクセントを付けた「バニラアイス」。松さん自身「私には到底作り出せない世界」と評した「愛が教えてくれたこと」。曲を聴いた時から1週間の曲にする野望を抱いた「日曜日は何処へ行った?」は、お茶目系の新境地的な作品。トーンダウンの役割を果たしている「白い坂道」、そして、アルバムを形付ける終局「home」は、メッセージ性よりも、自分が音楽を作っているということを伝えられたら・・・という想いが込められているそうです。レコーディングは1発録りでした。
なお、「home grown」には、初回盤と通常盤の2種類があります。初回盤のみ「花のように」のプロモ、「Clover」「明日にくちづけを」のショート映像、「日曜日は何処へ行った?」のレコーディング映像が収録されています。松ファンの方は、ぜひ初回盤を手に入れましょう!
ミュージックレビュー
14thシングル曲。詳細レビューは「Clover」をご覧ください。
Music
出だしのギターソロに強い印象が残る、透明感のあるバラードです。落ち着いたテンポの中で、クリアな声がとてもソフト。しっとりとした序盤は、とても清らかな雰囲気です。中盤で迫りくるようなオルガンは、体の奥をググッと押し上げられるようなインパクトを持っています。乾いた空気の中でつくため息のようなフレーズで、ホッと暖かくさせてくれる曲ですね。
Word
橘やなぎさんが描く、恋の始まりの歌。今まで近すぎる距離にいた存在、そして、ふとした表情から気づいてしまった、突然の恋心。その瞬間から胸の鼓動が響き渡り、心が揺れ動く。トレモロのように・・・。橘さんの、シチュエーションをイメージしてから心を捉えるといったスタイルに、ちょっと感動させられます。
14thシングル曲。詳細レビューは「明日にくちづけを」をご覧ください。
Music
川村結花さんから提供された、ノリノリで愉快なポップ曲です。勇ましくて、でもどこかおちゃらけた感じのアレンジが可愛らしい。幾重にも束なったコーラスラインと、元気に歌う松さんの声が、複雑に絡まっていくのが特徴的。バックのサックスや手拍子も、いいアクセントになっています。Bメロ出だしの音質を変化させているのも、なかなか面白い試みですね。エレキをかき鳴らしてフェードアウトするのも、印象的です。
Word
食べ物タイトル第3弾。全てを受け止めてくれる、愛する人へ向けたメッセージソング。その甘い恋を、「バニラアイス」に置き換えています。「バニラアイスがしみる」「バニラアイスが溶けた」と、うまく感情を表現しているのが面白い。「乾いた愛の目盛り」なんてオシャレな表現や、「バニラアイスが甘く溶けた夜」とかの、川村さんの乙女チックなフレーズにも注目です。
愛が私に教えてくれたこと
作詞:松本隆 作曲:掘込泰行 編曲:佐橋佳幸
Music
キリンジの堀越泰行さんが書かれました。全体的に、ビターテイストな雰囲気が流れています。広々とした空間を漂うようなエレアコやフルートの音が、ずいぶんすっとぼけた感じなのがこの曲の醍醐味。松さんの声やコーラスも、澄みわたるように綺麗に響きます。土台をしっかりと構成されていて、そのほかのパートは必要以上に増やさずにまとめられた、シンプルな曲です。
Word
終わりを告げた恋愛から、一歩成長した自分の気持ちを綴った詩。恋によって、見失ってた自分のことを改めて理解しようとし、恋から学んだことを胸に、新しい道を進む決意を示しています。「甘えているだけの女の子じゃないし」など、時折見せる大人びたフレーズに、松本隆さんが松さん自身を投影して表現しているのが、よく分かりますね。その一方で、「黙りこくってる海の三叉路」のように、人によってどうとでも解釈できる表現も多いですが(笑)。
Music
少し重い雰囲気が流れているバラードです。寂しげなイントロから、中間の切なさまで盛り上げるサックスが印象的。そこへ松さんのピアノが流れて、じわじわと曲の世界が広がっていきます。少々ジャズっ気が入り混じったアレンジは新鮮。前半と後半で、異なる歌い方をしていることに注目です。また、つい聴き入ってしまいそうなストリングスと、Cサビの幻想的なコーラスは絶品ですよ。
Word
切ない恋の、上手な忘れ方を描いた詩。印象に残るのは「空を見上げれば・・雨」。それまでの切ないフレーズとは反対に、驚くほど何気ない言葉で締めくくられています。「わすれかた」と、平仮名で表現しているところに深みがあり、その潔さと内容の重みが反比例して、場に空虚感を流しているのがすごいところ。そこに「巡る時の中でいくつ季節を越えるの?」と、松さんらしいフレーズも織り交ぜられていてGoodです。
Music
松さんの、包み込むような柔らかい声が響く、ピアノとアコギのみで構成された独唱形式のバラード曲です。怖いくらい神秘的で、神々しさを感じます。1つ1つの音を、ゆっくりと大切に奏でています。ささやくように歌う松さんの、透明な声をじっくりと堪能できる1曲ですね。ただ、雰囲気を強調させるためとはいえ、リバーブをかけすぎているのが気になるところ・・・。
Word
自分の伝えらられない気持ちを、詩風に綴ったもの。男性視点で描かれていますが、女性でも十分に共感できる内容になっています。大切な自分の心境を、その場で想像した景観に乗せているのが、神秘的であり異色めいている部分。でも言葉はとても柔らかく、煌いた輝きを放っています。目を瞑って、じっくり詩の世界に浸りたくなりますよ。
花のように
作詞:sunplaza 作曲:吉田美智子 編曲:佐橋佳幸
14thシングル曲。詳細レビューは「花のように」をご覧ください。
日曜日は何処へ行った?
作詞:松たか子 作曲・編曲:佐橋佳幸
Music
陽気で和やかなピアノで始まるイントロ。その曲風は思いっきりニューオリンズ調。染五郎さんの声が、ちょっと硬いかな(笑)。全体的に短めの曲ですが、レコーディングスタッフ総出でのバックコーラス、間奏ではマラカスをシャカシャカ交えての手拍子(変則16ビート)など、お遊び要素がたくさん詰まっています。
Word
月曜日から日曜日まで、まるで松さんの忙しい毎日を言葉に表したような詩。ロシア民謡「一週間」を思い出させるような、ユニークな歌詞となっています。あっという間の7日間のはずなのに、どこか日常的でのんびりした雰囲気なのが、何だか微笑ましい。でも最終的にはタイトルに繋がっていくので、やっぱりハードスケジュール(笑)。最後の日曜を日常とかけた部分の「私」は、紛れもなく松さん自身に他なりません(汗)。
スタッフの拍手が響き、アットホームな雰囲気から静かにフェードイン。ギターとアコーディオンによるインタールード(間奏曲)です。「日曜日はどこへ行った」とワンセットと考えていいでしょう。かすれたアコギの寂しい音の中から、懐かしさが見てとれます。そして、心休まるアコーディオンの音が、ひとときの安らぎを与えてくれます。「home」の序盤1フレーズだけを演奏し、あっさりとフェードアウト・・・。
白い坂道
作詞:松たか子 作曲:松たか子・佐橋佳幸 編曲:佐橋佳幸
Music
松さんと佐橋佳幸さんの共作。地味だけど、リズミカルで明るいポップスです。不協和音で始まるイントロがちょっとユニーク。でもオルガンには違和感がありません。珍しく、指パッチンを取り入れてます。サビ中盤の、飛び跳ねて音が途切れるフレーズは、可愛く歌い上げていて楽しいです。キーボードやフルートによる、ソフトな飾り付けもポイント。さりげなく弾いている、松さんのチェレスタ(鉄琴の一種)にも注目です。
Word
日常的な視点から、過去を思い返している詩。「白い坂道」は、空っぽの気持ち(「冬の白い」)で口ずさむメロディー(「坂道を歩く」)を表現しています。「あなたに会いたいな戻れないのかな」ってフレーズが可愛い。悲しむでもなく、過去を惜しむわけでもなく、ちょっとした願望を抱いているだけっていうシチュエーションが、松さんらしいですね。捉え方によっては、どこかでまた再開できるような、期待に満ちた前向きな歌にも感じられます。
Music
終始ギターソロで構成された曲で、アルバムのまとめ的な存在です。静かに奏でる佐橋さんのギターと、ささやくように響かせる松さんの歌声が、心を穏やかにさせてくれます。そして、とても優しくて切ない・・・。終盤、突然音響がピタッと止まり、ラストに向かって再びリバーブを響かせていく演出はお見事です。
Word
一目見ただけで、綺麗な歌詞だと印象付けられます。生まれた家、そこへ帰る幸せな二人と命の灯火の暖かさを、優しい言葉で表現されていて、どこまでも奥深く解釈できそうです。帰れる場所があるという幸せを、知っている松さんだから描ける詩ですね。
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